react-select の AsyncSelect が IME 確定後に検索を再実行しない
TL;DR
- react-select の
AsyncSelectは、IME(日本語入力)で文字を確定した後にloadOptionsを再呼び出ししないケースがあります。 - 原因は
compositionEnd後にinputValueが内部的に「変化なし」と判定され、検索が再トリガーされないことです。 AsyncSelectのloadOptionsパターンをやめ、通常のSelect+ controlledinputValue+useEffectによる自前検索に切り替えることで解決しました。
症状
非同期検索付きのセレクトボックスを react-select の AsyncSelect で実装していました。ユーザーがキーワードを入力すると API を呼んで候補を表示する、よくあるパターンです。
英字入力では問題なく動作するのですが、日本語入力で以下の現象が起きます:
- 「高」と入力 → 「高木」「高橋」などの候補が表示される ✅
- 「高木」と入力 → 候補が何も表示されない ❌
1文字なら動きます。2文字以上の日本語キーワードで候補が出ません。
前提: AsyncSelect の検索メカニズム
AsyncSelect は loadOptions という callback を受け取り、ユーザーの入力が変わるたびにこれを呼び出します。
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内部的には inputValue の state が変わったタイミングで loadOptions が発火します。
衝突: IME の composition イベントと react-select の内部状態
日本語入力では、ブラウザが以下の順序でイベントを発火します:
compositionStart— IME 変換開始(「た」「たか」「たかぎ」…)input/change— 変換中の中間文字列がフィールドに反映compositionEnd— 確定(「高木」)- 最終的な
changeイベント
問題は ステップ 2 の時点で react-select の内部 inputValue が中間文字列で更新されてしまう ことです。
IME 変換中の不要な検索を防ぐため、compositionStart/compositionEnd をフックして isComposing フラグを管理し、変換中は loadOptions 内で callback([]) して即 return する実装にしていました:
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一見合理的ですが、ここに落とし穴があります。
compositionEnd 後に loadOptions が呼ばれない
compositionEnd で isComposingRef.current = false にしても、AsyncSelect が loadOptions を再呼び出ししません。
なぜか。AsyncSelect は inputValue の変更をトリガーに loadOptions を呼びます。IME 変換中のステップ 2 で既に inputValue が「高木」相当の値に更新されているため、compositionEnd 後に改めて inputValue が変わりません。変わらないから loadOptions も呼ばれません。
結果として:
isComposing = trueの間にloadOptionsが呼ばれた →callback([])で空を返したisComposing = falseになった → でもloadOptionsはもう呼ばれない- 候補が空のまま
これは react-select の既知課題です:
- #3561: Need to support IME composition in Select
- #1578: onInputChange event fires too many times when inputting Chinese characters
試して失敗したアプローチ
1. isComposing チェックを debounce の内側に移動
loadOptions の先頭で即 return する代わりに、300ms の debounce 後にチェックすれば compositionEnd が間に合うのでは、と考えました。
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結果: 効果なし。 そもそも loadOptions 自体が再呼び出しされないため、debounce の内外は関係ありませんでした。
2. compositionEnd で key をインクリメントして再マウント
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結果: 症状悪化。 再マウントで入力中のテキストが消え、ユーザー体験が壊れました。
修正: AsyncSelect をやめて Select + controlled inputValue + useEffect
AsyncSelect の loadOptions callback パターンに頼ること自体が問題でした。inputValue の変更検知を react-select の内部に任せるのではなく、自分で制御します。
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ポイントは3つです。
inputValueを controlled state で管理 — react-select の内部状態に依存しませんcompositionEndでsetInputValue(e.currentTarget.value)を明示呼び出し — IME 確定後に state が変わることが保証されますuseEffectがinputValueの変更を検知して検索を発火 —loadOptionsの再トリガー問題から完全に解放されます
filterOption={null} は、通常の Select がデフォルトでクライアントサイドフィルタリングを行うため、それを無効化してサーバーサイド検索の結果をそのまま表示させるために必要です。
落とし穴: onInputChange の action を正しく処理する
上記の修正だけだと、候補を選択した後に選択された人名が表示されないという問題が起きました。
react-select は onInputChange を複数の action で呼び出します:
'input-change'— ユーザーがキーボードで入力した'set-value'— 候補を選択した(このときinputValueを空にリセットしたい)'input-blur'— フォーカスが外れた'menu-close'— メニューが閉じた
action === 'input-change' のみで setInputValue していると、set-value 時のリセット(空文字への変更)が反映されず、古い検索キーワードが inputValue に残り続けます。結果として value(選択済みの値)のラベルが表示されず、検索テキストが表示されます。
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さらなる改善: React Query への移行
useEffect + 直接 API 呼び出しパターンには別の問題もあります:
- stale response 競合: ユーザーが素早く入力を変更すると、先行リクエストの古いレスポンスが後発の結果を上書きする
- 状態管理の肥大化:
options,isLoading,isErrorをコンポーネント内で個別にuseState管理
React Query (useQuery) に移行するとこれらが自動的に解決されます:
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queryKey が変わると React Query が古いリクエストの結果を自動破棄するため、stale response 競合は構造的に起きません。enabled フラグで IME 変換中の検索抑止も統一的に制御できます。
まとめ
| アプローチ | 結果 |
|---|---|
isComposing チェックを debounce 内に移動 |
❌ loadOptions 自体が呼ばれない |
key 変更で再マウント |
❌ 入力テキストが消える |
Select + controlled inputValue + useEffect |
✅ IME 確定後に確実に検索 |
+ onInputChange の set-value 対応 |
✅ 候補選択後の値表示を修正 |
+ React Query (useQuery) への移行 |
✅ stale response 解消 + 状態管理簡素化 |
AsyncSelect の loadOptions は便利ですが、IME 入力との相性が悪いです。日本語・中国語・韓国語など CJK 入力を扱うプロジェクトでは、Select + 自前の非同期検索(できれば React Query)に切り替えることを推奨します。
補足: この問題は react-select v5 系で確認しています。react-select の GitHub Issues(#3561, #1578)では 2018 年頃から報告されていますが、2026 年現在も根本修正はされていません。